レッドリボンバッジ


ときどき話題にしている、ビーズ製のレッドリボンバッジ。
このバッジは、南アのHIV陽性者が作成したものをたくさん買い上げて、生活費の足しにと支援しています。
最近は、日本でボランティアでバッジを作ってくれる仲間もいます。私も、時間をみつけてチクチクと作っています。

チクチク・・針仕事のような表現ですが、本当に針仕事なんです。
針と糸で。糸を買うお金がない人はスーパーのレジ袋などのビニール袋を裂いて細く縒(よ)って糸の代わりにします。
ビーズをいろいろな模様、いろいろな立体的なふくらみを持たせた形へと編んだアフリカンビーズを見たことがある方もいらっしゃると思います。

レッドリボンの場合も針と糸で編みこんでいくのです。糸だと切れてしまうこともあるので、最近はテグスを使うようにしています。針もビーズ用に針の穴のとても小さいものがちゃんとあるのです。

タウンシップでは、家の照明は日本のように明るくありません。豆電球一つ分の明るさ、という家庭がほとんどです。停電も多いので、ろうそくも必需品です。スクウォッターキャンプ(スラム)だと、電気はとおっていないので、頼りになるのはろうそくの灯りのみ。だいたいは、空き瓶に無造作に差し込んだ蝋燭をつかっていて、インテリアとしての見栄えの良いものではない気はするけれど、ここの暮らしでは実用優先です。

そんな薄灯りの下で、一つのバッジの作成にはだいたい1時間。肩も首もパンパンに張ってしまいます。知っている女性で一番早く作る人が40分くらい、私は1時間ちょっとかかります。
昼間は、誰かの家に集まったり、ときには外で石やレンガに座っておしゃべりをしながら、つくることが多いです。
根を詰めると、かなり疲れ果てる作業です。それにバッジを作ることの一つの目的には、HIV陽性であることがわかって、不安を抱えている人が、何もすることがない時間に孤独感を感じることがないように、何か暮らしの中で取り組むものを・・という意味があるので、なかなか出来上がらないとしても、集まっておしゃべりする中で、楽しく過ごせることが一番なのです。
たまに注文が既に来ていて、出来上がりが遅くて困ったな〜・・ということがありますが、今はストックもできたので、誰かを急かして作ってもらうようなことはなくなりました。
とても上手にたくさん作ってきたのは、女性ではなく男性の陽性者です。バッジを触ってみると、硬くしまっているもの、柔らかいもの、始末が雑で仕上げをこちらでする必要のあるものなど、いろいろで作る人の個性が出ているな〜と思います。
私の南ア一番の友達の陽性者の作るバッジはとても硬い。そして私のは、ゆるゆるフニャフニャしています。

練習しても上手に作れない人もいます。スプリングスというタウンシップのユースグループに頼まれて、教えに行ったことがあるのですが、針は何本も折れ、テグスはちぎれ、バッジの形も斜めにゆがんでいき・・・本当に丸一日頑張ってとりくんだのですが、5人集まった仲間の誰一人作り方は覚えられませんでした。落ち込む皆をなぐさめるながら、「疲れちゃった・・」という一人一人の肩と手のマッサージ。
何もしないよりも、トライしてみて「駄目だな」とわかることは大切なことだから、彼らなりに良い経験になったと言ってくれました。
ビーズバッジを作る私の手元をのぞきこんで、
「アメージング・・! アフリカ人だね」 と(笑)
子供のように目を丸くしていました。

ちなみに私にビーズバッジやアクセサリーを教えてくれたのは、テンビサというタウンシップの陽性者グループです。教えてくれたというか、職人の弟子入りのように、「見て覚えてね」と放っておかれたのですが・・。でも初めて作り上げたときには、本当に皆で喜んでくれました。

そういった自分の体験もあって。
アフリカ文化の一つであるビーズ細工ですが、ニバルレキレでは陽性者自身だけでなく、日本人ボランティア(現在はMさんと私)も作成して、販売したものを活動費の一部に当てています。材料は陽性者が作る場合はこちらが準備し、できあがった時点で買い上げ。日本人の私たちは自分たちの自由になる日々のお金と時間を作成にあてています。
ニバルレキレがフェアトレードを行う団体だったら、現地の方による品物を重視しますが、ニバルレキレは、どんなことも、分かち合い精神で生きていくという一つのライフスタイルなので、バッジは作れる人がつくって、それが生かされるのが一番だと考えています。陽性者やエイズ遺児などエイズとともに生きる人たちの支援が集まることと、エイズへの理解を求めるシンボルのレッドリボンがPRされていくことが何よりの目標です。タウンシップでは、日本人の私たちが自分たちのスタイルのバッジを作って、コミュニティのための資金を作っている・・ときいて喜ばれる反応が多いのです。
失業率の高い南アのタウンシップでは、できれば細々とバッジを作ることよりも、しっかりとした生活の拠り所となる雇用や自営の仕事を持てることが、望まれています。

生きていくための希望や、やりたいことに近づくためのライフスキルを得ること、そのために南アに現存する社会資源をフルに有効活用したり、資源がないところには住民によって必要なものを作り出す。
そんな彼らの、豊かな人生への挑戦を、わたしたちが、このような販売活動やその他の活動で、資金を作りつつ支援できればいいな、と思いながら活動しています。

ビーズバッジを以前、アフリカンフェスタというイベントに来場していた若者から「他のアフリカ諸国のバッジと比較して高い」と指摘されたことがあります。いろいろと見聞き、体験をしている若者なのでしょう。また多くの人から「売るのは難しい」と聞きます。
実際に、販売するのは難しいです。いろいろなお店などで相談したことがありますが、「メッセージ性が強いものだと難しい。民芸調のものなら置ける」とか「食べものを扱うお店だからHIVというのは、お客様によっては反応される方がいてはいけないので・・」といったお話でした。どなたも、しっかりと検討してくださるのですが、結果的にはなかなか販売は難しいようです。
値段のことですが、ニバルレキレではチェコ製のガラスビーズを使うことによって美しいバッジを作るようにしていることと、一つの作成には慣れて手早い人でも1時間前後かかること、多くのアフリカ人にとっては南アの物価はとても高く、陽性者や遺族や遺児はギリギリでどうにか暮らしていること、などの理由で現在はバッジの値段は400円と設定しています。
400円は、例えばお昼ごはんを子供たちが4回食べられるお金です。また、こういったお金の積み重ねで、新学期に足や体の大きくなった子が通学の靴や制服を買ったり、学校指定の学用品(公立の学校も細かく文房具をしていています、しかも学校ごとにちょっと違うこともある)を買うときの、大きな足しになる、貴重な400円なのです。

ビーズバッジに関心をもたれた方、ぜひご連絡くださいね。
作ってみたい方、アフリカンビーズのアクセサリーに挑戦したい方もお待ちしています。

12月1日のエイズデーに向けて何かとりくみをされる方たちに、関心を持っていただけたら、うれしいな〜と思っているところです。