ともに同じ空の下で。

お元気ですか?私は元気です。



何年も前にもらった、樹文明さんからの手紙。

樹さんというのは仮名。

HIV啓蒙活動を続けてきた樹さんは

薬害エイズと薬害肝炎の被害者だ。

ずっとコツコツと、HIV啓発の活動、何よりも

差別をなくす活動を続けてきた。


樹さんはもう亡くなった。

最後に

「もっと生きたかった」

そう言って。



昨日七夕だったので、

なんとなく、昨日からいろいろな亡くなった大切な人たちの

遺してくれたものを手にとっている。


川の向こうとこちらをつないでくれる七夕。


ちょっと素敵な気持ちになる。


遺したものといっても、

「干し肉を買ってきて」なんていう震えた字のメモや

歯ブラシや、電話番号のメモ、しみのついた布の切れ端・・

そんなものばかり。


誰かが亡くなったら処分されてしまうようなものばかりだけれど、

やりとりしたときの光景が、音もすべてがイキイキと

よみがえる、これらのガラクタのようなものが

私は大好きだ。


別に過去を生きているわけではない。


一緒に、今や未来を生きていく感じ。


あったかい日々。



「自分だけが生きちゃっているんだなぁ・・」

それはとても不思議な気持ち。




それでは、再び南アフリカへ行かれるときは気をつけて、

必ず元気で戻ってきてくださいね。

私はこの熊本で自分に誇りを持ち

これからも小さい行動をおこなって生きます。

ともに同じ空の下で元気でいましょう。

そして、いつかアフリカの大地の上で再会できますように。

それまでの、それ以降も、元気でいて下さい。



樹さんとはアフリカでは再会できなかった。


ドクターストップが入ったから。

樹さんのくれた素敵な皮の十字架のネックレスを

南アの大事なエイズを発症していた友達に

プレゼントした。


樹さんは死なないと思っていたので、


死なない樹さんからのプレゼントにはご利益があると

思ったからだ。

でも、


樹さんも彼女も死んだ。



私も持病や障がいがあるけれど、

それは死に至る恐れを伴わないものだ。

それでも、自分には死はとても自然で

身近なものだ。


みんなが死んだからなんだろうか。


私だけが生きているからなんだろうか。



うまく言えないけれど、


死者と一緒に生きていくこと。


自分にとって

大切なことなんだろうな、と思う。