生きる。

とても動揺している。

少年がナイフでメッタ刺しにされた。
ニバルレキレでずっとケアしてきたエイズ遺児だ。
仲間全員にとって、彼は自分の子供も同然。

彼は家族半分をエイズで失って以降、一家の大黒柱として13歳から
ずっとふんばってきた。
私のワークショップをきいたことのある人なら、あの少年のことかもしれない、と思うだろう。

近所の子供が、彼の叔母に「死んで病院に運ばれた」という知らせを持って走ってきた。皆で動転しながらも病院を探し出し、彼がどうにか生きていることが確認できた。

私のところに送られてきた病院で撮った写真は、本当に全身メッタ刺しだった。あの何度もハグしてきた少年の体を誰かがこんなにも傷つけたことに、怒りと涙が止まらない。ずっと家族のエイズ死で心に傷を負ってきた少年に、どうしてこのようなことが起きるのだろう。

でも、これが南アフリカだ。南アのタウンシップの暮らしだ。
そう私もわかっている。
ナイフや銃の傷跡のない友人の方がめずらしいのがタウンシップ。

写真に写る彼の顔は、私の知る勇気ある少年の顔だった。彼なら乗り越えていくだろう。彼は南アの少年だ。皆で乗り越えて行こう。

だから、今度会ったときには、穴の開いた服のことなど思い出さないように、どっさりと服をプレゼントして、彼の好きな音楽の話をして、職業訓練校の様子をきき、そしていつものようにハグをして、どっさり肉を食べにでかけよう。

警察への被害届けその他今後困らないための手続きなどは、ニバルレキレの仲間が行っているところだ。

でも、大切な子供を失うところだった。
まだ心臓がバクバクとしている。

ひとしきり泣いたら、私にできることを今日も一日しっかりとやっていこう。そして、南アの皆に朝がやってきたら電話をかけようと思う。