クリスマス会での失敗

エイズ遺児たちのためのクリスマス会の日に、誰も気にしていなかたけれど小さな失敗をしてしまった。

私の手元には「割れないシャボン玉」というレシピがあった。
育児雑誌から切り抜いてずっと何かの機会に・・ととっておいたもので、まだ一度も試していなかったのに、クリスマス会で100人近いエイズ遺児が集まった場所で「シャボン玉がたくさん飛んだら楽しい!」と準備する気満々になってしまった。

材料に書かれているのは、オーガニックの食器用洗剤・ガムシロップ・炭酸水・精製水・ゼラチン。
手に入るだろうと、たかをくくっていた。
でもスーパーと薬局をくまなく探しても、見つからない・・。食器用洗剤は友人の家庭で我が家でも使っているオーガニック洗剤を見たことがあったのだが、特別なお店でないとやっぱり買えないのだろうか。オーガニック食品や自然療法のお薬も扱っている薬局で探して、「エコ洗剤」というのを見つけたけれど成分は完全なオーガニックではない。子供が口に入れるかもしれないから、という意味でのオーガニックなのだろうと思うことにする。
次はガムシロップ。ガムシロップを南アでは見たことがなかったな・・と思いつつ、飲料水の棚と製菓材料の棚を探す。ない。やっぱりない。うーん、はちみつにしようか、砂糖を煮詰めようか・・友人宅で何か探そう。
炭酸水。いかにも、という炭酸水が見つけられなかったので、シュエップスとスパークリングウォーターを買う。
精製水は、日本みたいにコンタクトレンズの商品コーナーがありそうでない。ミネラルウォーターでいいや。
ゼラチン。ただのゼラチンは売っていない。もう全てがゼリーの素になってしまっている。全商品のパッケージを見て、なるべく余分なものが入っていなさそうなのを選ぶ。イチゴゼリーの素。赤いシャボン玉になるんだろうか?

それをクリスマス会の前日に、魔女が鍋でぐつぐつ何かをつくっているみたいに、順番にレシピに従って、測りながら入れて作ってみた。フェイクイチゴのお菓子の匂いがプンプン漂い、チビが食べたい食べたいと騒いでいる。

翌日の朝。さぁ、ちょっと試してみよう、と子供と二人でシャボン玉を飛ばそうとすると、なんとも粘りのない液体が手についてしまう。ストローでやっても5ミリのあぶくがボタボタとストローから落ちていく・・
何か違うんだろうな〜と思いつつ、「まぁいいか」とすぐに思ってしまう私は、大きなペットボトルにその真っ赤な液体をつめてクリスマス会へと出かけていった。

会場では子供はわんさと集まり待ちくたびれていた。仕切り役のリーダーがまだ到着しないのだ。他のボランティアスタッフたちは料理のシチューのチキンが足りなすぎると騒いでいて、子供を遊ばすのを忘れていた。
さぁ、シャボン玉の出番。大きなトレーに赤い液体を入れると、子供がワラワラと飛びついてきた。
シャボン玉?そうそう・・・泡!泡!・・皆で手をバシャバシャとトレーの中で遊ばせる。うーん、シャボン玉はそれでは作れないんだけれど、でもまぁいいかな?トレーにアブクの山ができあがった。

そのあいだに、お絵かきイベントの支度をする。
慣れてるこっちのイベントの方が、やっぱり切り盛りしやすい。
洗剤だらけになった手を洗って、100人弱の子供がいっせいに夢中になって、机も椅子もない場所で、地面や家の縁台や壁をうまく使って水彩画を描き出した。少ない画材をみんなで分け合って仲良く絵を描いていく。その日だけで200枚の絵が集まった。

子供が絵に集中している間に、リーダーが登場し、料理の問題も解決に向い、いざ食事をスタートさせる準備がととのった。

誰も何も気にしていないけれど、私の頭の中でのアフリカの空を割れないシャボン玉がプカプカと飛んでいくという妄想ははかなく消えてしまった。この次は日本でちゃんと作れるようになってから、試そうかな。

シャボン玉になるはずだった液体は、その日の汚れ物洗いにその役目を得た。

今日はクリスマス。みんな、もらったプレゼントで遊んでくれているかな。

ブログを読んでくださっている皆さんも、メリークリスマス。
割れないシャボン玉、知っている人は教えてくださいね!