東京武道館(1)
昨日の仲間の報告を受けつつ、東京武道館へ行ってきた。
今日の目的は、4月16日の「震災わかちあいグループ@東京」の案内を行なうことと、メール相談の案内を掲示してもらうこと。
あわせて、避難所にいる被災された方とコミュニケーションを図ること。
行政サイドで入っている、コメディカルスタッフと話す機会をつくること。
東京武道館では、ボランティアの活動を避難所に常駐する東京都の職員が受け入れていないということを、ずっと確認していた。
そして初日からずっと、何か力になりたいと思う人たちが外の広場で、
館から出てくる方たちへ声をかけて、マッサージその他のサービスを
行なってきたことを知っていた。
その東京武道館に昨日ようやく、3月28日に「避難者救援センター」が
立ち上がった。
私達も昨日、活動登録をしてきたところだ。
今日の武道館の風景に何か変化が生まれているのだろうか?
期待感を持ちながら、武道館へと向かう。
武道館の表は、想像以上に閑散としていた。
初日からずっと表に立ち続けている鍼灸師の男性が、入り口の道をそれとなく示してくれる。
館内に入ったところに、まずの受付がある。
そこで今日は用件を言えば大丈夫だ、ときいていたので、そのようにすると、「それは聞いていない、こちらではわからない」という。
そして、都職員がずらりと並ぶデスクに連れていかれた。
そのデスクは「報道」の人と「医療関係」の人が受付するものらしい。
しかし、精神保健福祉士の有志による活動の受付はここではない、という。
どこだろう・・と受付の人が首をかしげる。
「あの、昨日のことで何かメモなり、残っていないでしょうか?」
と手元に彼が抱えるボードを確認してもらったところ、
ちゃんと昨日の用件のメモがはさまっていた。
「あっ。あの、あそこのボランティア登録のところではないでしょうか?」
受付の後ろのブース、「足立区社会福祉協議会」と張り出されている場所を指さすと「そうですね・・」と彼も合点したようで、そこへようやく案内してもらうことができた。
「昨日で話がとおっている」なんて偉そうに言うボランティアなんて
きっといなかったのだろうな、と反省。かえって手間取らせてしまった
のかもしれない。
館内のエントランスにスタンバイしている職員は東京都の職員。
その中で唯一の足立区のブース。
それが、たちあがったばかりの、足立区社会福祉協議会による、「避難者救援センター」。これが、地域住民と被災された避難所の方たちを結ぶ架け橋となる窓口だ。
その窓口に並んでいる方たちが、次々と話だけ済ませると、落胆した表情をして帰っていく。
誰もが順番に「今はボランティアは必要ないので、何かあれば連絡します」と説明されている。
何度も交渉をして、それでも断られている女性もいる。
「何か必要なことを手伝いたい」と言っても、「足りている」とは
答えが返ってくるけれど、中の様子は何も教えてくれないのよ・・と
女性が私に耳打ちしてくる。
社会福祉協議会の職員の説明によると、「〜をやります。どうぞ」と
活動PRのようなポスターだけは、持参してくれれば、掲示してくれる、
ということだった。
その張り紙を、散髪や入浴のサービスといった商店街からの申し出などの生活に関連したもので一まとめ、相談や医療に関連したもので一まとめ・・と一応のグループ分けをして掲示しているとのこと。
張り紙を用意してきていてよかった。
ボランティア登録を、きちんと昨日済ませてあることを、社協職員に確認してもらい、避難所に入って、避難所内の方たちとコミュニケーションを図ることについて打診。
断られているボランティア希望者のやりとりを聞きつつ、「精神保健福祉士」「社会福祉士」という資格の職務を説明し粘ってみる。
社協の方は、私がする質問一つ一つに、答えるために、奥の方にいるらしき都職員(おそらく医療系)との間を往復してくれた。
奥にいるらしき職員は、私達のような申し出に対して直接説明する意志はないということなのだろう。
社協の方の確認してくれた答えはこうだった。
現在東京武道館には6〜7名の保健師を常駐させるようにしている。
この保健師は足立区と、東京都が交代で勤務している。
健康相談のブースを設けて、保健師らが相談にのっている。
医師は医師会から派遣された医師が相談にのっている。
医師の中には精神科医もちゃんといるので、
メンタルヘルスという観点では、保健師が必要な方は治療につなげたり
ケアすることができるので、民間からの精神保健福祉士の活動は不要。
仮に、話が「医師会」と同じような職能団体からの申し入れだと、
また対応が違うのかもしれない。と社協の方なりの都職員と話しての感触も教えてくれた。
彼の誠意に甘んじて、食い下がる私の質問。
東京武道館はいつまで避難所として機能するのか。4月半ばということだが、延長される場合もあるのか。避難所の方では、公営住宅のあっせんの相談をする以外に、「グランドプリンス赤坂」への宿泊での避難をすすめているということだが、ホテルになるとプライバシーが保たれ、
避難所という環境から受けるストレスが減るメリットがあると思う。
しかし一方では、情報へのアクセスが減ったり、同郷の人とのつながりを維持する困難さや、生活相談などのニーズが満たされにくくならないか。その場合には被災者に自助努力を強いることになるのか。
今後は、被災された方たちはどう支援されていくのか。
以上に関しては、
彼は、自分にはなんとも答えられない。と困った顔になった。
「自分も実は心苦しい。でもこの避難所に関しては、東京都の
施設である以上、都が運営しており、都の方針の中でしか自分たちは
支援することができないんです。住民の方の、何かしたいという
気持ちもとてもよくわかるのだが、都が了解していないというか、
ニーズがないという中では、ボランティア希望の方たちとの
マッチングができないんです。」
足立区住民と東京都との板ばさみで、社協としては歯がゆい思いで
ボランティア希望者を、登録こそ受け付けているものの、実質の
活動を断っている・・ということなのだろう。
都職員に最後、食い下がると、避難所の方針は都のホームページで逐一の動きを私たちが追っていく以外に方法はない、という分かりきった答えはあったものの、支援についての方針は何も伺えなかった。
都職員や社協職員が言うように、本当に何もニーズはないのだろうか。
これだけの震災や原発事故によって、少なくとも慣れ親しんだ住まいから、遠方に避難している方たちと、私達一般住民はつながれないのだろうか。
見ることも入ることもできない武道館の静寂。
表をさまよう、住民の善意。
被災者と私達の間にある大きな隔たり。
隔たりを乗り越えなければ、私達はつながりあって、
一緒に復興に向かって歩んでいくことはできない。
その隔たりは誰が作っているのだろうか。
私達にできること。
それはなんだろう。