小さな炎(6)

親友のHIVアクティビストに相談した。

HIVアクティビストとは

HIV陽性者本人であって、なおかつHIV陽性者やエイズ患者のために
社会的な活動・人権活動などを行なう人たちのこと。

親友は、自身が10代前半でレイプ被害に遭い、
瀕死の重傷を負うだけでなく、
HIVに感染し、そして子どもを出産した。

HIV POSITIVE(陽性)とは、POSITIVE(前向き)に
生きる人生なのよ」

と多くの人に伝え続けながらも、
彼女自身もいろいろなコンプレックスや、
否定的な感情と、日々向かい合い、
葛藤しながら生きている彼女。


彼女だったら、フィアメーラとしっかりと
話ができるんじゃないか、と思った。


彼女はすぐに駆けつけてくれた。


スタッフたちも事情を知った。
泣いたスタッフもいた。


フィアメーラの話しやすい母国語のズールー語
長いこと、親友は話をしていった。


とりあえずフィアメーラは、普段のスタッフとのやりとりでは
見せない態度で、ウンウンとうなずいて話をきいていた。


私たちは話し合い、

もっと彼女に、たくさんの

みんなが、ありのままのフィアメーラを愛していること を

伝えて抱きしめていこうと決めた。



それからの日々、フィアメーラはクリクリの坊主頭だった髪を伸ばすことになった。



アフリカ人たちは、もともととてもお洒落。

髪の毛の強いカールをうまく利用して、美しい編みこみを作っていく。

スタッフが、定期的に思い思いの髪型で、彼女をお洒落させた。

おのずと、フィアメーラが、スタッフとじっくりと一緒に過ごす
時間が増えた。

髪を編みこまれている最中のフィアメーラは、口をへの字にまげて
かしこまって座り、私が話しかけても無視して、静かに神妙に座っている。


いとおしさを感じる相手の髪に人は触れたくなることがある。

また、髪に触っているうちに、いとおしさも増すのかもしれない。
髪を触られる方も、それに合わせるように心を開いていく。

ちょっとした魔法。


数ヶ月のうちに、フィアメーラの大人への痛烈な口答えが減っていき、
スタッフが彼女を怒ることも、少なくなっていった。