小さな炎(7)

2004年に入り、USAからの支援や
カトリック教会組織の支援、それから大学病院の医師による
プロジェクトが一体となって、

この施設のHIV感染孤児の子どもたちが、ARV治療を少しずつ
受けられることになった。

南ア政府の動きに先駆けて、子どもたちの命を救いたいという
人々の思いが、希望を私たちに運んできた。


6歳まで生きられる子どもがまれな施設。


つまり日々目の前で転がりまわって遊び、胸に飛び込んでくる
子どもたちは、ほぼ全員がすでに相当に免疫が下がり
いつエイズを発症してもおかしくない状況にあるということ。


エイズを完治させる治療法はまだ見つかっていない。

でも
ARV(抗レトロウイルス薬)の効果的な服用によって、
HIVに感染しても、エイズの発症を抑えることができるように
なっている。

先進国では慢性疾患となりつつある、HIVが、ここアフリカでは
人々の命を奪う一番の原因。

治療を受けることができるか否か。


ここの子どもたちは、何もしていないのに
親を失い、
HIVに感染し、
親戚からも拒絶され、

そして治療を受ける権利もなく
ひっそりと亡くなっていく。


そんな施設の子どもたちに、治療が保障されることになった。

画期的な出来事。

誰もが喜びを隠せなかった。



最初にARVを始める子どもの数は4人だけだった。

段階的に治療対象の子どもを増やしていく、ということだった。


フィアメーラは、最初のメンバーには入らなかった。

そして相変わらず、ときどき胸が痛くなったりしてはいたけれど、
少なくとも、大きな病院で、きちんと
心臓と、それから頬のコブを検査して、時期をみて
治療するという方向性が
出された。


4歳まで力強く生きてきた彼女に
これまでの、大人たちの見込みよりも長く生きるチャンスが生まれた。

その意味は、しっかりとフィアメーラにも伝わったようだった。


それから、髪型でのお洒落作戦を含めて
よく手伝いをするフィアメーラへの、大人からのプラスの声かけが
増えたことも、もしかしたら期待通りに影響を与えたのだろうか。


彼女は自分のことを「醜い」とは二度と口にしなくなった。


「フィアメーラ、かわいいね」


そう伝えたときに、

「違う!」とは言わずに、そして逃げたりせず、

うふふと笑うようになったのだ。



フィアメーラは、自分の力で大きく成長していた。