青い脚(2)

カビが一面に生えた脚をどうしたらいいのか、
私にはわからなかった。

カビの生えた浴室のタイルの掃除の仕方しか
頭には浮ばなかった。



ちょっと痛かったごめんね。


ポケットに入っていたティッシュで、
彼の脚の爪に生えた青いフワフワを
ぬぐってみた。

カビの根っこを絶やすことはできないのかもしれないけれど、
カビはティッシュにくっついてきたので、
彼の脚を洗ってみようと私は思った。


早朝の清拭に使っているタライを借り、
ベッドを濡らさないように
ビニールシートを自分の部屋から持ってくる。


誰にも触られない脚、そして痛い脚を
曲げる元気も彼にはなかったようで、
伸びきった脚を清拭していくのにまず苦労した。


頭の中に一瞬、彼の脚に生えたカビの菌が
私の手の爪の中から入り込み、何か
手が水虫よりももっと奇怪な皮膚の状態に
なってしまうイメージがわいた。



でもそれは、後でどうにかなるような気がした。
少なくとも、私は死の床についているわけではないのだから。



グローブを使うのがただ、
嫌いなのかもしれない。




カビは意外にも、スルスルっとタオルについてきて、
彼の明るい茶色の肌が現れてきた。




南アフリカ人は、アフリカ人どうしでも、
肌の色が明るい人が多いと思う。



スツの彼の肌は、アフリカ人としては色白だった。



きれいな肌をしていたのね。



彼は黙って私の動作をじいっと観察していた。


何回かタオルを洗い、
タライのお湯をとりかえ、
何回目かには、石鹸をつけて洗った。

そして何回も、石鹸をしっかりと落とすために
再び清拭を繰り返す。

次第に柔らかくなった皮膚から古い角質がボロボロと
はがれてきた。

足先をきれいにするには、
日数がかかりそうだった。


柔らかくなった爪を切り、


足先からゆっくりとマッサージをしていく。



・・・ディ。


え?



クムナンディ。



彼は、

満足そうに、にっこりと笑った。