ニバルレキレ展 絵の話。

ニバルレキレ展は2004年の春から日本全国で巡回を続けている、エイズ遺児の絵画と写真展。
スタートしたときの作品は、エイズホスピスで生きる子どもたちの写真と絵画や工作だけだったけれど、今はタウンシップの子供たちの写真や、絵画作品も増えている。

タウンシップだと、少ない画材に、わーっと皆が寄ってきて、床に寝転んで夢中になって書くので、気づくと、表裏に書いている人や、泥だらけになっている人や、作品も、さすが子供達という、汚れよう、塗りたくりようになっている。ビリビリ、グシャグシャ、ボロボロ・・の紙を回収することも多い。
タウンシップの子供達には、いわゆる図画工作を楽しむような時間はほとんど用意されていない。現実的に買い物可能なお店で手に入るクレヨンや色鉛筆、絵の具、紙といったものは、質が悪くて、かすれたような色でしか絵を描くことができず、といって画材屋で調達するとなると、日本よりも高額になってしまう。
それでも、少しでも存分に絵を描いてもらいたくて、日本からいろいろ持っていったり、現地でも画材としての絵の具を利用するようにしている。

本当は、エイズ遺児の子供と少人数のグループ活動として、絵画活動をしていきたいな、という気持ちや、一歩進めてアートセラピーという活動を定着させるためのアフリカ人の仲間とつながりたいな、という気持ちもある。でも今のところ、タウンシップで皆で、わいわい思い切り、お絵かきを楽しむ!という日々にはない娯楽を提供する・・というのが最近のニバルレキレでの絵画活動だ。


お絵かきをしよう!という場が少し落ち着いた空間でできる場合には、
カラーパウダーの大瓶がショッピングモールの文具店やパーティーグッズのお店で販売されているので、赤・青・黄といった基本色を用意しすれば色はいくらでも作れるので、あとは子供たちの前で色を作りだして、皆で塗ることもできる。
この時には、子供達からは歓声があがる。赤と青をまぜて紫ができたとき、青と黄色で緑ができたとき・・子供の目はまん丸になる。
こういうときは、盛り上がりもすごいので、フィンガーペイント、というかハンドペイント、いつのまにか絵の具に足をつけて、子供をジャンプさせて足の裏アート、ボディーアート、と存分に楽しんでもらうことにしている。
なかなかこういうときの作品は紙も大きいから、ぐるぐる巡回させる展示会の荷物セットには入らないので、お見せできなくて残念。

そしてこのカラーパウダーでの色づくりなのだが、一緒に子供に絵をかかせているアフリカ人の仲間の目もまん丸になる。
子供に何かを教えたりケアする、ということを仕事としているアフリカ人の若い世代の仲間たちが、この色彩マジックというか、日本人の私にとっての「基本的な知識を」を知らない人がほとんどであることに、はじめはとても驚いた。

アフリカといえば、私には豊かな色彩感覚にあふれた国というイメージだ。それに実際に色が準備されてさえいれば、独特の色彩感覚で絵でもビーズ細工でも何でも作ってしまう人が多い。
だけれど、30歳前後の私の友人たちは、いろいろな私が子供の頃から自然に見につけてきた、暮らしの中での知識を本当に知らない、という場面に本当によくぶつかる。
色。それ自体は別に知らなくても、困らないかもしれない。
でも、知らないより知っていた方が、目の前にいる子供たちに驚きと喜びと知識を与えてあげることができる。
それができない、彼らの世代。
エイズで一番打撃を受けている世代。
アイデンティティにもがいている世代。自尊感情に飢えた世代。
何か、過去の歴史の悲しみを感じてしまうのだ。
そして、もう1つ感じることは、色のエピソードはあくまで1つの例であること。
こういった、「赤と青があれば紫ができる」つまり、何かがあれば、他の新しいものも工夫して作れるという、発想そのものに慣れていない、そういう思考をトレーニングされていない・経験できなかった世代は、仕事やコミュニティーでのプロジェクト、プライベートな暮らしの中でも「○○がないから、できないんだ」と諦めがちになってしまう行動パターンを身につけやすい。
「何もないけれど、これしかないけれど、作ってみよう。あるものでやってみよう。」という発想を励まし、工夫を助言し、ちょっと実際に例としての手本を見せたりしてみる。それを本当にじっくりと、長いつき合いの中で、彼らが「そうかもしれない。よし、やってみようか」と信じられるようになるまで、待つ。諦めも早いけれど、つき合い続けて、次のやる気が湧き上がるまで待つ。湧き上がらなくても、もちろん仲間は仲間だ。そして、彼らたちのコミュニティにいる子供たちは、私達みんなが守っていかなければならない子供たちだ。

子供の作品によるニバルレキレ展だけれど、その中で私たちは、エイズとともに生きる様々な世代の人の心に触れてきた。


来年度あたりに、展示内容をいろいろと変えていってみようかと案を練ってているところ。
イデアも募集中。画材・画用紙の寄付は大歓迎!
なにかある方は ngibalulekile2003@gmail.com までどうぞ。

現在のニバルレキレの作品をまだ見たことがない人はぜひ、どなたでも展示会の主催者になれるので、気軽に声をかけてくださいね。