音楽。(2)

サンディーレが呻いた。

どこかが痛むのだ。





痛むのは左側の腹部だった。


熱をもって、そして腫れている。


このホスピスでその痛みを回復に向けて
治療するということはきっとできないだろう。


痛みを抱えながら彼は最後の日々を暮らしていく。



彼のお腹にそっとのせた私の手にサンディーレが手を重ねてきた。




彼が過ごしているこの1号室で
いったい今までに何人が亡くなっていっただろう。


何人と、友達になっただろう。


サンディーレは腹部が痛くて辛いというのに、

その腹部の熱さに、
彼が今ここにいること、
彼が生きていて、その体がまだ動いていることに
私は感謝していた。


サンディーレの生きている時間のやさしさに
私は癒されていた。


いつのまにか、私はボロボロと泣いていた。


子どものような目をしたサンディーレが

じっと私を見つめ、
そして目をつぶり、
笑った。


サンディーレは私から手を離すと、
ある仕草をした。


手を合わせ祈り
そして自分の首を切る真似をして、
その手を後ろへ払う。


そのジェスチャーの意味は
南アなら誰でも知っている。



僕はもうすぐ死ぬんだよ。



彼はもう一度私を見つめると、再び笑った。