ノンプメレロ(3)

病院のスタッフが連絡先ということが

ノンプの孤独を説明していた。


近くには連絡先として頼める人がいない。

というよりも、頼めなかった。

話せなかった。

あるいは家族が話させてくれなかった。

いろいろなことが想像できる。


エイズという秘密を抱える。


その寂しさの中で

孤立してノンプは過ごしてきたのだった。





その病院のスタッフもラマポ−ザなの?と訊くと、

ノンプは「その人のこと、知らない」と返事した。

入院時についてきた家族が書いたらしい。

家族の知人なのだろうか?


困ったね・・と話をしていると、

いつも患者さんが亡くなった場合の

諸手続きを行っているスタッフが、

ノンプに万が一があったら

死亡後の手続きに苦労することになりそうだ

との予測もあったために、一応その連絡先に電話をかけてみてくれた。

「私は何も知らない。ラマポーザの知人に頼まれた。
 
 知人に連絡をすることしかできない」

という相手の言葉。

そして知人を経由して、

ようやくノンプの家族から戻ってきた返答は

「死んだら教えてくれ」

というものだった。



ノンプには伝えられなかった。


連絡先の人がどういう立場かだけを彼女には報告した。


でも、ノンプはわかっていたのだろう。

だから「無理よ」と最初にきっぱりと言ったのだろう。


「ノンプ、ごめんね」と謝ると、

「仕方ないよ。これが私たちの人生よ」と彼女は首をすくめた。





だいたいのアフリカ人の人たちは、

タウンシップやスクォッターキャンプで、

大家族で肩を寄せ合って暮らしている。

ご近所とのつきあいも盛んだ。

それが、エイズによって孤立してしまう。

辛さは壮絶だ。


ノンプは子供の父親とは、ずいぶん前に音信不通になっていた。

感染がわかったのは、ホスピスに入院する直前だった。

わかったとたん、家族にもとても拒絶的な態度をとられたのだそうだ。


「子供を抱かせてもらえなくなったけれど、

 子供はこれからも抱いてもらえるんだとわかって安心した・・」

とポツリポツリと彼女はつぶやいた。

ホスピスの入院を紹介してもらい、

結局家族との溝は修復できないまま、

ノンプは家を去ってきたのだった。



無口な彼女が、自分の人生のことを少し教えてくれた。


「あなたの人生は?」とノンプが笑った。