2011-10-22から1日間の記事一覧

ノンプメレロ(7)

リンディーは、あらゆることを失念してしまって、いろんな失敗は多いものの、ノンプのことだけは「ノンプ」「ノンプ」といつも話しかけていた。 ノンプとリンディーの二人は、自分がお水を飲むときには相手に声をかける。 差し入れのビスケットも丁寧に枚数…

ノンプメレロ(6)

隣のベッドにいたのは、リンディーウィ(仮名)。 エイズ脳症もあって、ほぼ一日、ホスピスの病棟内を徘徊して過ごしている。 リンディーウィは、いろいろなことが頭から抜けてしまうので、歩くための歩行器を忘れて、廊下の壁に張り付いていたり、パジャマ…

ノンプメレロ(5)

二人部屋の並ぶ病棟は、自力で身のまわりのことができなくなって、ほぼ寝たきりの日々が中心になった患者さんが過ごす。 入院した日からその病棟に入り、丸1日で亡くなる患者さんもいる。 勘のいい患者さんたちだと、2人部屋の病棟への移動の話に、言葉に…

ノンプメレロ(4)

ノンプメレロとの会話は、本当にゆっくりと、ゆっくりと積み重ねていったものだった。 例えば、ラマポーザには家族はいるの?ときいた日には、「ママ。」で彼女は黙ってしまったし、子供のことも何日もたってから「子供が二人いるの。」とポツリと教えてくれ…

ノンプメレロ(3)

病院のスタッフが連絡先ということがノンプの孤独を説明していた。 近くには連絡先として頼める人がいない。というよりも、頼めなかった。話せなかった。あるいは家族が話させてくれなかった。いろいろなことが想像できる。 エイズという秘密を抱える。 その…

ノンプメレロ(2)

ノンプのトレードマークは頭に巻いた赤いバンダナ。 ファーザー・ニコラスが日本からのお土産で彼女にプレゼントしたものだ。 彼女は、本当に本当に静かな少女だった。 彼女の声を私がきいたのはホスピスで出会ってから2週間くらいしてからだった。 みんな…

ノンプメレロ(1)

今日からノンプメレロという女性の話をしようと思う。ノンプのことは、 ちょうど南アでのワールドカップ開催の頃に はじめた このはてなダイアリーで、書きながら 途中でスタックしてしまって、言葉が 自分の中から出てこなくなってしまって、 そのままにな…