ノンプメレロ(5)
二人部屋の並ぶ病棟は、
自力で身のまわりのことができなくなって、
ほぼ寝たきりの日々が中心になった患者さんが過ごす。
入院した日からその病棟に入り、丸1日で亡くなる患者さんもいる。
勘のいい患者さんたちだと、
2人部屋の病棟への移動の話に、
言葉にはしないものの、
自分の死を意識し始めることになる場合も多い。
個室はないので、隣のベッドで友人になった人が
亡くなる姿を目の当たりにする。
カーテン越しには、死後の清拭その他の
ケアをしている音がきこえる。
ノンプが、そういった気配から
何か怯えを感じていないか、ついつい
彼女の部屋は病棟で私が長居してしまう場所のひとつになった。
ところが、その二人部屋で彼女は
「私、友達を作ったわよ」と、ある日
笑顔で私に話しかけてきた。
体は限界に近づいていて、
ほぼ1日をベッドで過ごし、
トイレも女性用のベッドの上で使える尿器を利用している生活。
でも、ノンプは笑顔だった。